「人は居場所を求めている」

私が、居場所のデザインを提唱するようになった理由のひとつを今日はお話ししようと思います。

そもそも、「居場所」と「場所」はどう違うのか。

大きく違います。 居場所には、人がいます。それと、「自分の気持ちのよりどころ」みたいな感覚的なものも含まれています。

人は、何らかのかたちで人と接しながら、生活しています。

一番小さなカタチが、「家族」「家庭」であり、次に、「学校、職場」などで、または、「友人、知人、仲間」との接するカタチで、地域との接するカタチや、大きくは国、はたまた世界、地球など小さなところから、大きくなっていくのが、人の接し方のカタチですよね。

でも、どんな場合であっても、「自分は自分、ひとりだけ」これは、どんな場面、場所でも同じです。でも、気持ちとしては周りに人が多いほど、自分が小さく感じるもので、不思議なものです。

ここで、「家庭の中の住まい」をイメージしてみましょう。今や、核家族化して、自分と妻、子どもの3人か4人住まいが多いと思います。

たくさんの人がいる中で、家族はたったの3人か4人。そんな少ない人同士の生活なら、うまくやれるかと言えば、全然そんなことは無く、毎日、苦労や悩みが尽きませんよね。

人がたくさんの人と接する規模が大きくなるほど、人と人の接し方は小さくなり、その分家族間で出くわすような、悩みや苦労の大きさは小さくなっていきますね。人との接する密度が濃ければ濃いほど、その問題や悩みも大きくなっていきます。それと、自分の課せられた問題に、接する人が近ければ近いほど影響が及びますね。よくあるには、自分の問題を人のせいにする人もいます。

あなたが、おまえがこう言ったから、こうなってしまった。どないしてくれるの! みたいな。

本当は理性では理解してるのですが、自分のことは自分で何とかしないといけないのですね。でも、感情が自分の問題をすり替えてしまうことがあります。

アドラー心理学のアドラーから言わせれば、他人の課題には踏み込まない。課題の分離をせよと。相手の問題は相手がどうにかすることであって自分の問題ではない。だからこそ、自分の問題は自分の問題として自分で解決する習慣をつけないと、いつでも相手を巻き込んでしまい、ややこしくなると、気持ち的にもどんどん離れて行ってしまう場合もあります。

アドラー心理学では、「人の悩みのすべては対人関係の悩みである」と言っています。家庭の中で、ぎくしゃくしている関係性の中では、「住まい」という空間も、良くみえないことでしょう。

また、ゆっくりくつろげる空間があったとしても、とても落ち着いたリラックスした空間にはならないでしょう。これこそ、「居心地が悪い」

この「居る」という場を良くするには、人の問題を無視して、空間をつくるわけにはいかないと感じてました。

「家を建てる」ということは、大きな生活の一大事であり、また、夢大きなプロジェクトであり、ワクワクするものです。とても前向きな行動のひとつです。だから、「家を建てる。家を持つ」といった場面では、家族の仲は悪くない事が多いです。一般的には。家族で協力してやっていく、創造性のある行為ですね。

協力的な、前向きな姿勢でいたのだから、念願のマイホームを叶えて新しい暮らしを始めてみても、ずっと前向きな姿勢でいられるかと思いきや、当初のような関係性ではいられない事が多い現実があるのも確かです。小さな事から大きな事まで、苦労や問題が日々起こる事から、課題の解決に追われる生活になっていくと、最初の夢に見たマイホームでの暮らしが、どこかに飛んで行ってしまいます。ほんとうは、家で寛いだり、団らんしたいし、その空間での生活シーンを楽しみたいのに。

「居心地をよく」するには、人の問題を避けては通れません。なぜなら、「空間の場」の感じ方は人それぞれ違うからです。皆の意見や思いをすべてカタチにすることは難しくても、概ね共通したデザインという答えをつくることは出来たりします。でも、そこにいる家族の思いを別々に聞いてひとつのデザインにすることは、結構むずかしいことです。でも、ここのデザインをしないと、「居心地よい空間」は出来ないのではないかと思っています。

私の言う「居場所のデザイン」とは、コミュニケーションのデザインとも言えると思います。人と人の課題を解決し、その場を「人が居れる場」にする為のデザインは、人と場をつなぐデザインです。

「居場所がある」ということは、少なくても、「自分はここにいてもいいんだ」っていう所属感、感覚があると思います。家族の居場所であるマイホームには、家族それぞれの思いの詰まった場所が出来れば良いでしょう。そこにめいめいの思いの居場所が出来ていきます。

ひとつの空間には、ひとつのデザインですが、そこに色々な人と場がつながる、ひとつ以上の要素があるデザインになっていきます。だから、同じ空間でも、めいめいの思いの居場所を「自分の場」として感じることができます。

「居場所のデザイン」は、単なる空間のデザインではなく、「人と場」をつなぐ場のデザインであり、人と人の思いをカタチにするデザインでもあります。

家づくりの時から、家族の暮らしや人生をイメージして、「居場所のデザイン」をしていくことで、「居心地の悪い」暮らしのシーンをつくらない事に、貢献していけるのではないかと思い、提案、提唱していくことにしました。

「居場所のデザイン」は、究極的には「人の幸せ」をつくるデザインではないかと思っています。

関連記事

PAGE TOP